いとしいこどもたちに祝福を【後編】

すると、晴海が再び口を開くより早く京の腕がそれを制するように目の前に伸びてきた。

「京さん」

「君が風弓くんでないなら、僕らは他のところを当たるよ。僕らの目的は陸を取り戻すことだしね」

普段より少し冷たく感じる声色で京が言い放つと、青年は多少動揺した様子で京を見上げた。

「あんたは…」

「僕は京。陸の兄だよ」

「陸、の」

相手が陸の名に反応を示したのを見て、京は確信したように眼を細めた。

「君の反応から見ても弟は此処にいるみたいだね。行こうか、晴海ちゃん。余り時間がない」

そう告げると、京は素っ気なく背を向けた。

「!待って、京さ…」

「やめろ!これ以上、この施設に深入りするな!」

すると青年は噛み付くように、京へ向かって声を上げた。

「…僕らが此処に来た訳は話した筈だよ。それとも、誰かに行って欲しくない理由でもあるのかい?僕らは君とは初対面だ、君には関係のないことだろう?」

「…っ」

――京は、相手に自分が風弓であると、認めさせようとしているのか。

最初は意図が見えなかったが、そのために相手を煽るような言動を取っているように見える。

「僕らの大切な家族を取り戻すためには、危険と解っていても此処に深入りせざるを得ない。だから僕も、彼女もそれを承知で此処に来たんだ」