いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「あっ、ちょっと待っ…」

心の準備をするよりも先に、京に腕にを引かれる形で晴海は目の前の真っ黒い闇の中に飛び込んでいた。

「ひゃ、あっ…」

成程、まるで身体がじわじわと闇に同化していくかのような感覚に、ぞわりと背筋に寒気が走る。

しかし今はこれが京の呼び出したもので、悪意のないものと解っているため余り恐怖感はないのだが。

――陸は何度も、こんな暗闇に襲われる夢に悩まされていたのか。

そしてまた、この暗闇の中に呑まれてしまったのかと思うと胸が締め付けられるように苦しくなった。

(…陸、風弓……)

そのとき、見渡す限り一面真っ暗な闇に覆われていた視線の先に、ぼんやりとした何かが見えてきた。

「京さん…あれ、は?」

「僕たちの目指す、道標だよ」

京が道標、と指したそれに向かって、身体はゆっくりと前に進んでゆく。

すると徐々にその何かの輪郭がはっきりと見て取れるようになって、“何か”ではなく“誰か”であることが判った。

その“誰か”は、力なく壁に凭れながら項垂れていて顔が見えない。

それでも自分には、“誰か”が誰であるのかすぐに判った。

京や周が、四年振りに再会しても陸を見間違うことがないと言っていたのと、同じだ。

あれは――

「風弓!!」