「晴が嫌なら勿論、無理強いはしないよ。単なる一つの提案だから」

陸がふと柔らかく笑いながら晴海の頬を撫でる。

いつも陸はこちらの意思を尊重してくれるから、その言葉にも嘘はないだろう。

単に、自分にとって想定外だった発案に驚いてしまっただけで――晴海自身、陸が自分を恋人として公認してくれるのは嬉しいことだ。

「全然、嫌ではないよ…?」

「本当っ?」

しかしそう答えた瞬間、陸はやはり嬉しそうに眼を輝かせた。

「なら発表の日取り、早いうちに決めようか。晴海ちゃん、あまり気負う必要はないからね?単に君と陸との仲が春雷の国で公認になるだけで、何か大して変わる訳じゃないから」

「…国中から、公認……」

それは十分大きな変化と言えるのではないだろうか。

霊奈家の面々は庶民に近い感覚の持ち主と言われているとはいえ、価値観の相違というのはこういうところで顕著に表れるのかも知れない。

「大丈夫よ、最初は不安かも知れないけれど…春雷の人たちはみんな優しい人ばかりだから、二人のことも歓迎してくれるわ」

「愛梨さん…」

こうなると、一番心強いのは過去に同じような経験をしたであろう愛梨である。

「でも、嬉しいな」

「陸?」

「これで、晴は俺のだって堂々と言える。秦や真都みたいな奴らに、もう今までみたいな好き勝手はさせやしない…」

…語尾がやけに殺気立って聞こえた気がするが、気のせいにしておこう。