「いっそのこと、良い機会だから婚約発表しちゃえばいいんじゃないかな?それならもう陸に縁談の申し出も来なくなるし」

漸く仲直りを果たした晴海と陸を前にして、京が機嫌良くとんでもない提案をした。

「ええっ?!」

「ああ、それいいかも」

しかもその発案を受けた陸は、兄を止めるどころか相当乗り気だ。

「こっ…婚約って…!陸、私まだ十六だし、陸だって十八だよっ…早すぎないっ?」

「あら晴海ちゃん、わたしが陸を産んだのは十七のときよ」

慌てふためく晴海の姿に、傍らの愛梨がくすくすと笑みを零す。

因みに春雷に限った話ではなく、八ヶ国共通の法定で婚姻は男女共に満十六歳の誕生日を迎えれば可能ではある。

とはいえ、実際に結婚する人間はそう多くない。

「僕が産まれた頃の父さんは晴海ちゃんと同い年だしね。これは流石に家庭の事情故の異例だけど、父さんは十四で婚約して十五で結婚してるんだよ」

だから僕なんてのんびりし過ぎなんだ、と齢二十三の京はけらけら笑って見せた。

…この早婚の家系め。

「晴のところだって、仄さんも充さんも若いじゃないか」

「そうでもないよ。私たちが産まれたときはお互いに二十過ぎてたもん…」

確かに今までなら、自分の両親は結構若い部類に入ると思っていたけれど。

霊奈家の話を聞いていると才臥家の話が見事に霞む。

というか領主の家柄と一般家庭である我が家の実例では、比較対象にはならない気がする。