いとしいこどもたちに祝福を【後編】

京から予想外の言葉を投げ掛けられ、思わず問いに問い返してしまった。

「いや、驚かせてごめん。晴海ちゃんが腕に触れたら、君に良く似た背格好の子の姿が視えて…その子の気配がはっきり何処に在るのか判るようになったんだ」

「私が…触れたら?京さんが私から何か、読み取ったんですか?」

「僕は君から受けた思念に感応しただけだよ。一体、どうやって風弓くんの居場所を見付けたんだい?」

京は怪訝そうにこちらを見つめたが、自分自身も全く訳が解らなかった。

「わ…解らないんです。私、風弓のことを考えてただけで姿が視えた訳でもなくて」

「双子同士、通じ合う何かがあるのか?いや…もしかして晴海ちゃん、君は……」

「京さん…?」

京は考え込むように黙り込んだが、すぐに小さく首を振った。

「駄目だ、何れも憶測の域を出ない。とにかく今は風弓くんらしき彼の傍には誰もいないようだから、他の誰かが現れる前に彼の元へ急ごう。話はその後で、また」

「は…はい」

今は月虹へ潜入することが先決――先程起こった現象の正体が何であれ、先に進まなければ。

だが、これで風弓の居場所に転移する切っ掛けが出来たということか。

何にせよ多少は京の役に立つことが出来たことは嬉しかった。

「今度の移動は闇の精霊に頼もうか。だけどこれ、目立たないのはいいけど余り移動のし心地が良くないんだよね」

苦笑した京のほうをふと見ると、その両手からは黒い煙のような影が生まれていた。

黒い塊は京の腕に纏(まと)わり付くようにうねりながら地面に落ちると、染みが広がるようにじわりと大きな円を描いた。

「行くよ」