いとしいこどもたちに祝福を【後編】

あの夜、晴海を傷付けるようなことを言ってしまった。

それどころか、晴海に嫌われても仕方ないようなことをしてしまった。

晴海が邸を飛び出してしまう前に、ちゃんと追いかければ良かったのに。

病院での騒動の後、風弓から晴海の心意を――香也に何を言われて、晴海が何を想い悩んでいたのか――教えられて尚更後悔した。

晴海が自分の出自や身分差について、深く悩んでいたなんて想像もしていなかったんだ。

だからこそ、先程の縁談の話を聞いてこんなに動揺しているのだろうと思うと、胸が痛かった。

同時に、晴海はまだこんな自分のことを好きでいてくれているのかと思うと、嬉しくもあった。

晴海の抱えていた不安に比べれば、自分の悩みなど可愛いものだ。

記憶を取り戻す前か、後かなんて関係ない――ずっと晴海は自分を待っていてくれていたのに、自分がそれに気付いていなかっただけだ。

(――ああ、俺は馬鹿だな)

春雷のことを想って、とはいえ、一時でも晴海の傍を離れようと考えていたことに苛立ちを覚える。

どちらも自分にとってかけがえのないものなのに、どちらかだけを選ぶなんて無理だったんだ。

京が言っていたように、どちらも守れる方法を見付ければいいんだ。

「……ねえ、りっくん」

晴海は何か言いたげに、じっと陸を見つめている。

「うん」

晴海が言いたいこと、訊きたいこと。

それを自分は、きちんと受け止めなければ。