いとしいこどもたちに祝福を【後編】

少年は、一目見て気に入った少女からそう手放しに褒められ、嬉しくて仕方なくなった。

「ありがとう」

そして今までで一番の満面の笑みを浮かべると、少女の頬に唇を寄せた。

「ひゃっ…」

「――ねえ、君さ。大きくなったら、俺のお嫁さんになってよ」

「えっ……お、およめ、さん?」

「駄目?君は俺のこと、好きじゃない?」

唐突な申し出に困惑する少女を前に、断られるのは想定外と言わんばかりに少年は首を傾げた。

「えっ、と……いや…じゃ、ないけど…」

だが六歳の内気な少女には、まだ幼い子供の口約束と言えども明確な答えを出すのは難しかった。

「まだ…よくわかんない」

「それじゃあ、大人になるまでに考えておいて?そしたら俺、返事を聞きに君に逢いに行くよ」

「ほんとに?また…あえるの?」

「うん。絶対、行くから」

彼の“お嫁さん”になるかどうかは別としても、少女はまた少年と逢えることに胸を高鳴らせた。

「おとなになったらって、どのくらい?」

「うーん…十年くらいかな?そしたら俺、十八だもの。大人でしょ?」

年齢の割に少々ませた少年は、小指を立てた右手を少女へ差し出した。