いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「そうか…僕は弟と半分しか血の繋がりはないけど、こっちには性別という壁があるからねえ」

京は本気とも冗談とも取れるような面持ちで、くすくすと笑った。

「…京さん?」

物議を醸すような発言に思わず眉根を寄せると、京は茶化すようにひらひらと手を振った。

「やだなぁ、ちょっとふざけてみただけだよ?からかってごめんね。それに僕は陸が、僕の弟として生まれてきてくれたことが何よりも幸せなんだ。それは風弓くんも同じじゃないかい?」

前半が本心か否かは不明だが、後半の言葉には素直に賛同出来る。

「それは…そうですね」

「晴海ちゃんの一番になれなくても、君は彼女のたった一人の双子の弟なんだから。君にしか出来ないことをすればいい」

「俺が、出来ること」

「僕は陸の兄として、あの子を守るって決めてたんだ。陸が生まれるより前から」

(…俺も)

物心ついた頃からずっと傍にいた、晴海。

自分より身体も力も弱くて、内気で人見知りで。

誰に促されるでもなく、守ってやらなきゃいけない存在だと肌で感じていた。

「…陸を好いてくれる女の子が、晴海ちゃんのような素敵な子で…僕も嬉しいんだ」

「京さん」

京の口から晴海のことをそう言われるのは、何だか不思議な気分だ。

「風弓くんが僕の弟のことを同じように思ってくれていたら、僕は本当に喜しいよ」