いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「いやっ…たった今、たまたま此処に通り掛かっただけで!俺たちは全然、何も…」

嘘は言っていない、偶然通り掛かったのは事実だ。

こうなったら全力で誤魔化すしか――

「りっくんが、けっこんしちゃうってきいたよ」

「ねっ、姉ちゃん…!」

「りっくんのうそつき。わたしのそばにずっといてくれるって……わたしにおよめさんになってほしいって、いってたのにっ」

「「…え?」」

晴海の言葉に、今度は風弓と京が同時に凍り付いた。

陸だけは驚愕した様子で、眼を瞬く。

「は…る、記憶……戻ったの、か…!?」

「こないでっ!!」

恐る恐るこちらへ歩み寄る陸に、晴海は噛み付くように声を張り上げると、くるんと踵を返した。

「晴!!」

逃げるように駆け出した晴海を追って、陸が風弓の真横を瞬時に擦り抜けてゆく。

「姉ちゃんっ、陸!」

自分も後を追おうとして、風弓は足を滑らせて盛大に転倒した。

「いてっ!!」

今の自分の足はほぼ使い物にならないということを、すっかり忘れていた。