いとしいこどもたちに祝福を【後編】

京も陸も、自分たちに話す必要があることならば後々きちんと説明してくれるだろうし、関係ないことなら首を突っ込む必要はない。

だが実際、目の前でどんな会話がされているのかは確かに気に掛かる。

仕方なく風弓は中の二人に気取られないよう、そっと扉の隙間の角度を拡げた。

「――…とにかく、さっきの話は一旦忘れるんだ。返答はなるべく時間を稼いでからしておくよ。輝琉の狙いは僕らを焦らせて返事を急かすことだろうからね…」

(輝琉…?確か、黎明の領主がそんな名前だったっけか)

「兄さん、俺…」

「元々お前は正式にあの場にいなかったんだ。僕も縁談の件(くだり)はお前に言うつもりもなかった。だからお前も、晴海ちゃんたちにそのことを話す必要はないよ」

(縁談…誰のだ?姉ちゃんに伝えるなってことは、陸の…か?けど、この前にあった一斉見合いの話は流れた筈じゃ…)

「ふゆちゃん、えんだんってなに?」

「え?ああ…親同士が決めた相手とかと、結婚することかな」

不意に訊ねられて何気なく返答した瞬間、しまった、と思ったが――遅かった。

「りっくん、だれかとけっこんしちゃうの?!」

「!?」

晴海が上げた声に、陸と京が一斉にこちらを注視する。

「晴…?!」

「風弓くんも…今の話、聞いていたのかい?」

表情を強張らせた陸とは真逆に、京が満面の笑顔で問い掛けてきた。

やばい、笑顔の裏側から物凄い威圧感を感じる。