いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「あの双子の話によると、月虹の施設は領主邸宅と繋がっているんだそうだ。だけど過去に僕が陸を捜しに訪れたときに、それらしい建物は見当たらなかった」

そもそも月虹は、極秘に造られた施設だと陸も言っていた。

「地上にないんだったら、……地下?」

「そういうことだね。当初は月虹みたいな施設が存在するだなんて、予測してなかったからなあ…」

「じゃあ、入り口を探さなきゃ」

「いや、それより施設内の何処かに転移出来れば好都合なんだけど…ちょっと待ってね」

京はふと深呼吸をすると、目を伏せて黙り込んだ。

「――…駄目だ、はっきり視えない」

だが暫くして目を開いた京は、そう言って小さく首を振った。

「邸の真下に空間があるらしいのは判るんだけど、目眩ましの結界が張ってあるみたいで内部の様子が視えないんだ。不用意に転移して見付かったら危険だし…」

確かに、転移した先がもし内部の人間の目の前などであったら元も子もない。

「せめて空間の中で見知った人間の気配が見付かれば、それを頼りに周囲の様子が視えるようになるかも知れないけど…それが出来れば苦労はしないか」

見知った人間の、気配。

それが判ればその人の傍へ転移が出来るということか。

「やっぱり晴海ちゃんの言う通り、入り口を捜して潜入したほうが良さそうだね。邸の傍まで近付いてみよう」

陸はきっと、容易に気配を読み取れない監視下に置かれている。

だったら、風弓は――?

しかし京は風弓と面識がないし、何の力もない自分には何も視ることすら出来ない。