いとしいこどもたちに祝福を【後編】

京の後を追って陽司も急ぎ足で去ってしまい、陸は父の執務室に一人取り残されてしまった。

(――兄さん、俺に何か隠してる…?)

輝琉の要求してくる内容が同盟締結の交渉だけなら、兄があんなに焦る必要はないことくらい、何となく察しがつく。

自分に聞かれては不都合な話でも上がるのだろうか。

だが“後で必ず事情を話す”と言ってくれた訳だし、単に輝琉を自分と逢わせたくないだけなのか。

「…なら要するに、俺がその場にいないように見えればいいんだよな?」

陸はふと、あることを思い付いた――それは父が行っていたのと同じ、“霊視”を用いて兄たちの様子を“視る”こと。

難点は精霊を喚ぶことや魔法を扱うこと以外、自分は霊媒師としての技能は未だにほぼ素人なことなのだが…同じ邸内の様子を視る程度なら何とか出来るだろうか。

そして相手は霊媒師として数段上手の兄だ、霊視と同時に自分の気配を消さねば直ぐ気付かれてしまう。

やはり、今のうちに止めるべきだろうか――ふとそんな考えも浮かんだが、そもそも何故輝琉が自分の同席を望んでいたのかが気に掛かる。

結局、兄には申し訳ないと思いつつも陸は会談が始まったであろう応接室に意識を集中させた。



『――…して、お父上のお加減は如何程かの?京殿』

(…よし、何とか成功はしたみたいだ)

硝子製の卓を挟んで京の向かい側に、二人の男が並んで鎮座しているのが視える。

京から見て右に座する、少々色褪せた黄金髪をした老年男性が黎明の領主・輝琉――その隣の白金髪の壮年の男は秋雨の領主の占部だ。

『ええ、全く大したことはございませんよ。思うように動けずとも、相変わらず口だけは達者な父でして』

輝琉の問いに対して、京は満面の愛想笑いを浮かべる。