いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「俺と美月の違いは、この邸でお仕えした主人でしょうか。俺は周様、あいつは先代の領主様…お二人のお祖母様でした。あの方は実の息子にさえ辛辣に接するお方で……僭越(せんえつ)ながら、愛情表現が余り得意ではなかったんです」

父が、祖母のことを話すときはいつも寂しそうに笑っていたのをふと思い出す。

「美月も…愛をよく知らぬまま、周様をお慕いする気持ちだけを募らせていたのかも知れません。その結果、あんな愚行に走ってしまったのかと思うと…俺は何かあいつにしてやれなかったんだろうかと思うんです」

陽司はもう一度陸の頭を撫でると、小さく首を振って苦笑した。

「とはいえ美月の行いは決して許されることではないし、今更悔やんでも仕方のないこと。…せめてもの救いは京様や貴方様が無事に戻って来られたことです」

「陽司さん…」

「陸様が大切な使命を背負われていることは、京様から既に伺いました。そんな折に失礼とは存じますが、せめて今暫くは…お父様のお傍に付いて差し上げてくださいませ」

「うん…大丈夫、俺も父さんの傍にいたいから」

「…今朝のお加減は如何でしたか?」

「まだ意識は戻らないんだ。母さんがずっと付き添ってて、顔色は随分良くなってきてるけど…もう倒れて丸二日以上経ってるし…」

陸につられて京が浮かない表情を見せたせいか、陽司は京に向かって微笑みかけた。

「…あの方のことですから、今に何喰わぬ顔で起き出していつものように笑って見せてくれますよ」

「陽司さん」

有難う、と陽司に言葉を掛けようとしたそのとき――主が不在の書斎机の卓上からけたたましい呼出音が鳴り響いた。

「!」

「正門の衛視室からですね、何でしょう」

陽司は訝しみながら通信機の受話器を取ると、俄に陸や京に向けるときとは違う仕事用の顔付きに切り替えた。