いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「――兄さん、入るよ」

ふと扉の向こうからの呼び掛けに振り向くと、陸が顔を覗かせた。

「あ、陽司さん。来てくれてたんだ」

「陸様!お変わりありませんでしたか?」

陽司は京たちに対し言葉遣いこそ丁寧だが、悠梨と同じく気楽に話せる伯父のような存在でもある。

陸も同様の認識で、家族のように気心の知れた相手に向けるものと変わらぬ表情を陽司に見せている。

「元気だよ。それにこの前、電話で話したばかりじゃない」

「いえ。陸様が戻られてから直接お逢い出来たのは今日始めてですし、お一人で冬霞まで赴かれたと聞きましたので心配で…本当に、ご無事で何よりです」

陽司の掌が愛おしげに陸の髪を撫でる。

「……それから。美月の奴のこと、気が付けずに申し訳ありませんでした」

「っ…!!」

ふと苦々しげに顔を顰めた陽司の言葉に、陸は面喰らった表情を浮かべて身を硬くする。

傍らで二人の遣り取りを眺めていた京自身、その名を耳にした瞬間ざわりと血の気が引いたが、陽司の心意を推し量り声に出し掛けた言葉を飲み込んだ。

「…あいつとは同じ孤児施設出身でしたから、俺は妹のように思ってましたが。あいつが俺をどう見ていたのかは良く解りませんし、何を考えていたのかも…結局最後まで解らず終いでした」

「……あの人はいつから、あんな…」

陸は言葉を続けようとしたが、不意に辛そうな面持ちで首を振った。

「…俺が知る限り、幼い子供の頃からあいつは孤独を抱えていました。いや…あいつだけでなく俺も、当初は同じだったんです」

「陽司さん、も…?」