「――京様。こちらの処理は一通り終わりましたよ」
「有難う、流石は陽司(ようじ)さんだね。来て貰えて本当に助かったよ」
「いえ、俺は大したことはしておりませんよ。京様がしっかり執務をこなされるから、俺も補佐するのが楽です」
陽司と呼ばれた銅(あかがね)色の髪をした男は、京に向かって穏やかな笑みを浮かべた。
「頼りにしてくださって、本当に光栄です。この陽司めに出来ることでしたら何なりと申し付けてくださいね」
彼は元々、周の右腕と評され最も周から信頼を受けている部下であり、京が父の補佐を始めるまでこの役目をしていたのはこの陽司だった。
陽司は京にその役目の一切を引き継ぎ終えると、郊外の集落を警護する職務に就いて邸を離れたのだ。
以来、彼は邸に時折顔を見せるものの普段はその集落で暮らしている。
陸と愛梨の帰還を祝う催しの際は領地周辺の警護に忙しく邸に来れなかったが、通信画面越しに両親や陸と顔を合わせるなり大喜びしていた。
今回も周が倒れたと連絡を入れてから、すぐ飛んできてくれた。
陽司は以前、周の代わりに領主の職務を代行していた時期もあるため、今の京にとって一番頼りになる存在だ。
「しかし京様、まだ黎明からの交渉を要求する申請は止まないんですか」
「うん…本当に諦めの悪い方でね。もしかしてこっちが根負けするのを待ってるのかも知れないな…」
手元には黎明から届いた、未返信どころかまだ読めてすらいない交渉依頼書が数通溜まっている。
本来なら目上の領主の打診に対し無視…ではなく無反応とは無礼な対応だが、向こうが返信する暇も与えず次々と依頼を送ってくるのだから仕方ない。
「周様が何度も断っていらっしゃるんでしょう?だとすれば十中八九、それが狙いでしょうね」
「取り敢えず、父さんが倒れたことを向こうに知られるのはなるべく遅くしたいな…僕じゃ父さんと同じようには上手いこと行かない」
一度でも直接逢って、断りの返答をしておいたのが不幸中の幸いだった――暫くはそのことを理由に申し出を断ることができる。
「有難う、流石は陽司(ようじ)さんだね。来て貰えて本当に助かったよ」
「いえ、俺は大したことはしておりませんよ。京様がしっかり執務をこなされるから、俺も補佐するのが楽です」
陽司と呼ばれた銅(あかがね)色の髪をした男は、京に向かって穏やかな笑みを浮かべた。
「頼りにしてくださって、本当に光栄です。この陽司めに出来ることでしたら何なりと申し付けてくださいね」
彼は元々、周の右腕と評され最も周から信頼を受けている部下であり、京が父の補佐を始めるまでこの役目をしていたのはこの陽司だった。
陽司は京にその役目の一切を引き継ぎ終えると、郊外の集落を警護する職務に就いて邸を離れたのだ。
以来、彼は邸に時折顔を見せるものの普段はその集落で暮らしている。
陸と愛梨の帰還を祝う催しの際は領地周辺の警護に忙しく邸に来れなかったが、通信画面越しに両親や陸と顔を合わせるなり大喜びしていた。
今回も周が倒れたと連絡を入れてから、すぐ飛んできてくれた。
陽司は以前、周の代わりに領主の職務を代行していた時期もあるため、今の京にとって一番頼りになる存在だ。
「しかし京様、まだ黎明からの交渉を要求する申請は止まないんですか」
「うん…本当に諦めの悪い方でね。もしかしてこっちが根負けするのを待ってるのかも知れないな…」
手元には黎明から届いた、未返信どころかまだ読めてすらいない交渉依頼書が数通溜まっている。
本来なら目上の領主の打診に対し無視…ではなく無反応とは無礼な対応だが、向こうが返信する暇も与えず次々と依頼を送ってくるのだから仕方ない。
「周様が何度も断っていらっしゃるんでしょう?だとすれば十中八九、それが狙いでしょうね」
「取り敢えず、父さんが倒れたことを向こうに知られるのはなるべく遅くしたいな…僕じゃ父さんと同じようには上手いこと行かない」
一度でも直接逢って、断りの返答をしておいたのが不幸中の幸いだった――暫くはそのことを理由に申し出を断ることができる。


