視線を巡らすと辺りの様子は一変していて、まだ夜明け前の薄闇に包まれており薄暗かった。
「此処は…」
見渡す限り続く大きな街道だが、周囲は荒野が広がるばかりで何も見当たらない。
「薄暮の国、の少し郊外かな。この移動の仕方で街中に転移したら相当目立つからね、都市部からは少し離れた場所に着くようにしたんだ」
街はあっち、と京に指差された方角の少し先に、どうもそれらしい街並みが闇夜に浮かんで見えた。
「…?そういえば春雷を出るときはもう明け方だったのに、薄暮はまだ夜なんですね」
「薄暮は八ヶ国の中で一番日照時間の短い国だからね。でも国の名の通り、夕闇の迫る時刻の空模様はとても綺麗な国だったんだよ」
「…だった?」
ふと見上げると、京は神妙な面持ちで街の方角を見据えていた。
「空が暗いのはそのせいだけじゃない。街の上を良く見てごらん」
街の上空に目を凝らすと、街の所々から灰色の靄のようなものが立ち上り薄暗い街灯を更に滲ませている。
「あれは……煙、ですか?」
「二十年くらい前に兵器開発に力を入れ始めた薄暮は、街中にそのための工業施設を乱立したんだ。その工場が四六時中吐き出す排煙のせいで、此処の空は常に曇っているようになった」
「…!」
「薄暮はその利益で急速に豊かになったけど、それはこの国本来の姿じゃない。先代が治めていた頃は、もっと街全体が明るい国だった――まあ、これは父さんが言ってたことだけど」
ということは、現在の領主に代わってから薄暮は変貌してしまったのか。
月虹を造ったのも、炎夏や樹果に戦争を仕掛けたのも、全ては現領主の行いによるもの――
「どうして、先代の領主様は今の領主様を…」
「此処は…」
見渡す限り続く大きな街道だが、周囲は荒野が広がるばかりで何も見当たらない。
「薄暮の国、の少し郊外かな。この移動の仕方で街中に転移したら相当目立つからね、都市部からは少し離れた場所に着くようにしたんだ」
街はあっち、と京に指差された方角の少し先に、どうもそれらしい街並みが闇夜に浮かんで見えた。
「…?そういえば春雷を出るときはもう明け方だったのに、薄暮はまだ夜なんですね」
「薄暮は八ヶ国の中で一番日照時間の短い国だからね。でも国の名の通り、夕闇の迫る時刻の空模様はとても綺麗な国だったんだよ」
「…だった?」
ふと見上げると、京は神妙な面持ちで街の方角を見据えていた。
「空が暗いのはそのせいだけじゃない。街の上を良く見てごらん」
街の上空に目を凝らすと、街の所々から灰色の靄のようなものが立ち上り薄暗い街灯を更に滲ませている。
「あれは……煙、ですか?」
「二十年くらい前に兵器開発に力を入れ始めた薄暮は、街中にそのための工業施設を乱立したんだ。その工場が四六時中吐き出す排煙のせいで、此処の空は常に曇っているようになった」
「…!」
「薄暮はその利益で急速に豊かになったけど、それはこの国本来の姿じゃない。先代が治めていた頃は、もっと街全体が明るい国だった――まあ、これは父さんが言ってたことだけど」
ということは、現在の領主に代わってから薄暮は変貌してしまったのか。
月虹を造ったのも、炎夏や樹果に戦争を仕掛けたのも、全ては現領主の行いによるもの――
「どうして、先代の領主様は今の領主様を…」


