打って変わって声を弾ませた雪乃に、如月は溜め息をつきながら首を振った。
「まだ生きてはいるよ、陸との約束だからな」
「…陸が?どうして?」
「才臥のことを気に病んで、奴の子供らに肩入れしているんだ。だから奴の娘の傍から離れなかったのか」
それとも他に思い入れでもあったか――と思いつつ、雪乃が騒ぎそうなので如月は黙っておいた。
「っ…あいつらが陸に家族とか故郷とか、訳のわかんないこと吹き込んだんだ!だから陸は風弓のことなんか気に掛けて、おかしくなっちゃったんだよ!」
しかし徹底して才臥の血筋が気に入らないらしい雪乃が、俄に金切り声を上げた。
そんな彼女の突発的な大声には慣れたもので、如月はくすくすと雪乃を宥めるように笑って見せた。
「だがそんな感傷的な想いも余計な感情も、もうすぐ全て消え失せるよ」
「…あはっ、良かったあ」
想いを寄せる相手にとっては不幸でしかないことを、素直に喜べる目の前の少女を滑稽だと思った。
彼らをそういう思考に造り変えたのは自分たちであることも棚に上げて、憐れだとも思った。
上辺だけの言葉や外見に面白い程簡単に騙される、憐れで従順な操り人形たち――万事が等しく思い通りであれば、どれ程良かったろう。
そんなことを今更憂いても仕方ないと、如月は自嘲の笑みを浮かべて小さく首を振った。
「…どうやら霊奈の嫡男が動くようだからね。彼にも仕上げを手伝って貰うことにするか」
+ + +
「まだ生きてはいるよ、陸との約束だからな」
「…陸が?どうして?」
「才臥のことを気に病んで、奴の子供らに肩入れしているんだ。だから奴の娘の傍から離れなかったのか」
それとも他に思い入れでもあったか――と思いつつ、雪乃が騒ぎそうなので如月は黙っておいた。
「っ…あいつらが陸に家族とか故郷とか、訳のわかんないこと吹き込んだんだ!だから陸は風弓のことなんか気に掛けて、おかしくなっちゃったんだよ!」
しかし徹底して才臥の血筋が気に入らないらしい雪乃が、俄に金切り声を上げた。
そんな彼女の突発的な大声には慣れたもので、如月はくすくすと雪乃を宥めるように笑って見せた。
「だがそんな感傷的な想いも余計な感情も、もうすぐ全て消え失せるよ」
「…あはっ、良かったあ」
想いを寄せる相手にとっては不幸でしかないことを、素直に喜べる目の前の少女を滑稽だと思った。
彼らをそういう思考に造り変えたのは自分たちであることも棚に上げて、憐れだとも思った。
上辺だけの言葉や外見に面白い程簡単に騙される、憐れで従順な操り人形たち――万事が等しく思い通りであれば、どれ程良かったろう。
そんなことを今更憂いても仕方ないと、如月は自嘲の笑みを浮かべて小さく首を振った。
「…どうやら霊奈の嫡男が動くようだからね。彼にも仕上げを手伝って貰うことにするか」
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