――三人と共にやってきたのは、春雷の港湾施設だった。

日野の船に乗せられて春雷にやってきたときには立ち寄らなかったが、この建物のすぐ傍を通って街に入った記憶がある。

「それで兄さん、お客さんって…」

「うん?ほら、ちょうど着いたところだよ」

くすりと笑うだけで陸の問いには答えず、京は窓を指差した。

其処には外の停船所に大きな船が今しがた停泊する様子が見えた。

「陸。私も君も、知ってる人だよ」

自分と夕夏が知っている人物、と言われてまず頭に浮かんだ人物が、連絡通路からこちらへ大きく手を振っていた。

「――仄さん!!」

以前と変わらぬ明るい笑顔を浮かべながら歩み寄ってくる仄の傍らには、炎夏で世話になったにも関わらずろくに挨拶も出来ないままだった人物が、もう一人。

「天地先生…!」

「暫く見ない間に、随分いい顔付きになったじゃないか。前よりずっと男前だよ」

嬉しそうに笑う仄に、久々に思い切り髪を掻き回される。

「うわ、ちょ…っ待って仄さん」

そんな遣り取りを眺めながら、天地はくすくすと笑みを零した。

天地も変わらず――と言いたいところだったが、その姿は以前よりも幾分痩せたように見えた。

「良かった、左腕の調子もいいみたいだね。制約の魔法は無事解けたのかな?」

「はい、お陰様で。だいぶ色々とありましたけど…」