「こんな私でも…あの子の力になれているのかしら」

そう言いながらも、紗也は心底嬉しそうに顔を綻ばせた。

「俺も、守護者としての力は父と母から受け継いだものです。だから…この力を持つことや両親の子に生まれたことを、とても誇らしく思っています」

「…!有難う、陸さん…あの子と同じ使命を受けた方と、お逢い出来て良かった…どうか息子のことを、よろしくお願いします――」



――沙也と別れて地上へと戻ると、途端に冷たい空気が肌を刺した。

雪山から吹き下ろすひやりとした風を受けて、香住や沙也の言葉を思い返しながら陸は歩みを止めた。

「…、……」

一面に広がる雪原を前に、晴海は雪を見たことがあるのだろうかとふと考え耽(ふけ)る。

炎夏で暮らしていた頃、雨が苦手だと寂しげに話していたことがあった彼女にも、この静寂に包まれた銀世界を見せたいと思った。

架々見の陰謀や一族同士の対立などの諍いや柵(しがらみ)を打ち消すことが出来れば、そんな小さな願いも叶えられるようになるだろうか――





愛子(まなご)を護する眼差し 終.