いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「――ねえ如月、陸は?戻ってきてるんでしょぉ?」

不意に背後から間延びした猫撫で声を掛けられ、如月は振り向かずに応じた。

「雪乃か…陸にはまだ逢えないよ」

「どうしてぇ?早く逢いに行きたかったのに」

「今、陸は大事なお話の最中なんだよ。架々見様もいらしてるから大人しく待っていなさい」

「そっかぁ…それなら仕方ないね」

普段は比較的奔放な振る舞いを見せる雪乃も、こればかりに関しては実に素直に引き下がった。

「ああ。最初からそうしていれば良かった、そうすれば才臥も無駄死にせずに済んだものを」

「…才臥?」

如月が小さく呟いた言葉を、雪乃は耳ざとく聞き付けて訊ね返した。

「…そういえば雪乃、お前も才臥の娘と逢っているね。あの娘…香也からは能力者ではないと報告を受けたが、お前はどう思う?」

自身の気に入らない人間の話題を立て続けに聞かされ、雪乃は不愉快げに眉を顰めた。

話題の人物のことに気を取られてか、明らかに話題を変えられたことには気付かなかったようだ。

「才臥の娘の話?もう思い出したくないんだけどぉ…あの香也がそう言うんだしあたしも能力者じゃないと思うよ、他の奴に守られてばっかりだったもの」

「そうか…彼女も能力者だとばかり思っていたが、私の思い違いだったか」

「能力者なら、襲われても自力で何とか出来るでしょ」

「…風弓の代替えになる水の能力者探しは難航しそうだな」

「風弓はもう始末しちゃったのぉ?あいつすっごい生意気だったから別にいいけど」