いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「…必然であるとすれば、それは何の為に?」

「それを答える前に、我らも確めたいことがある。そなたが本当に適格者であるのかを…のう」

瞬間、殺気立った気配が複数、室内に満ち溢れた。

「…!」

人数は八名――当初の香住同様、姿は見えないものの、気配は陸を取り囲むように孤を描いている。

「その者等は、我が一族でも手練れの魔導士たちだ。しかしそなたが本当の守護者なら、容易に太刀打ち出来よう」

「守護、者…?」

聞き慣れない言葉に問い返したが返答は無く、周囲の八人が一斉に魔導の詠唱を始めた。

「!…もう始まってるってことか」

ちりちりと部屋中に充満した魔力が、空気を揺らすのが分かる。

そういえば、制約の魔法が解けてから自分の意思で実戦に挑むのはこれが初めてだ。

「その者等は加減を知らぬ、ゆめゆめ気をつけられよ」

香住の言葉を合図にし、八方から八つの属性魔法が放たれる。

正面の二人が光と水、左が風と金、右が木と地、後方の二人が焔と闇。

陸が一度に喚び出せる精霊は五つが限度、自身の風の能力と合わせても六つ――対極の属性同士で一つずつ相殺するには手数が足りない。

(だったらっ…!)

先ず目前から迫る閃光と水流を、左手で作った闇の孔(あな)に吸収し、左前から放たれた鎌鼬と鉄塊を右手から生み出した岩壁で砕く。

次いで身を翻すと、後方から襲う焔の渦と闇の呪詛を光魔法の障壁で跳ね返し、右方向の地中から這い擦って来る樹木の根と地割れからは、足元へ送り込んだ突風の浮力で飛び退けた。