「顔を上げよ。そなたの父より、概ね事情は聞いておる。そなた、霊奈の血筋でありながらその身に風の精霊を宿しているそうだな。して、自身が何故そのような力を持つのか獅道の知識を借りたいと」
「…はい」
「しかし何故、獅道がそれに関する知識を持つという考えに至った?」
訝しむ香住の問いに、陸はゆっくりと顔を上げた。
「俺は貴方の一族の…香也を良く知っています。彼が俺と対を為すような力を持つことも。香也は、此処に来れば俺の求める答えを得られると俺に言いました」
「…香也、とな。彼奴(あやつ)は四年前に自ら冬霞を棄てた愚か者だが、確かに元は掟を重んじる我が一族の出。霊奈の人間であるそなたに、断片的とはいえ容易く情報を与えると思うか?」
故郷を、棄てたーー香也は自分から月虹に協力を申し出たという話を、風弓から聞いたことがある――やはりあれは事実だったのか。
「…貴方たち一族の掟や霊奈との対立については、自分なりに理解しているつもりです。それでも…今はお互い、争ってる場合じゃない。俺はそう感じています」
「ほほう。何故だ?」
香住の声に、僅かながら愉しげな色が混じる。
「俺と香也…対の力を持つ二人が協力し合わないと守れないものがあるから――ではありませんか」
「……何も知らぬ筈のそなたが、其処まで勘付いているとはな。やはり解るものなのか」
香住はまるで、その答えを待っていたかのように目を細めた。
一瞬、冷たい瑠璃色の眼が和らいだように見える。
「…?」
「儂が今回、そなたからの申し出を受けたのも同じ理由。今は一族同士で争っている場合ではないのだ…――ところでそなた、齢(とし)は幾つか」
「十八です」
「左様…件(くだん)の香也も同じ齢。そなたと彼奴が同じ年に生まれ、対を為す力を持つのは単なる偶然ではない、ということだ」
「…はい」
「しかし何故、獅道がそれに関する知識を持つという考えに至った?」
訝しむ香住の問いに、陸はゆっくりと顔を上げた。
「俺は貴方の一族の…香也を良く知っています。彼が俺と対を為すような力を持つことも。香也は、此処に来れば俺の求める答えを得られると俺に言いました」
「…香也、とな。彼奴(あやつ)は四年前に自ら冬霞を棄てた愚か者だが、確かに元は掟を重んじる我が一族の出。霊奈の人間であるそなたに、断片的とはいえ容易く情報を与えると思うか?」
故郷を、棄てたーー香也は自分から月虹に協力を申し出たという話を、風弓から聞いたことがある――やはりあれは事実だったのか。
「…貴方たち一族の掟や霊奈との対立については、自分なりに理解しているつもりです。それでも…今はお互い、争ってる場合じゃない。俺はそう感じています」
「ほほう。何故だ?」
香住の声に、僅かながら愉しげな色が混じる。
「俺と香也…対の力を持つ二人が協力し合わないと守れないものがあるから――ではありませんか」
「……何も知らぬ筈のそなたが、其処まで勘付いているとはな。やはり解るものなのか」
香住はまるで、その答えを待っていたかのように目を細めた。
一瞬、冷たい瑠璃色の眼が和らいだように見える。
「…?」
「儂が今回、そなたからの申し出を受けたのも同じ理由。今は一族同士で争っている場合ではないのだ…――ところでそなた、齢(とし)は幾つか」
「十八です」
「左様…件(くだん)の香也も同じ齢。そなたと彼奴が同じ年に生まれ、対を為す力を持つのは単なる偶然ではない、ということだ」


