いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「…俺や陸にとっては有難かったが、才臥さんは……俺よりもずっとつらかっただろうな」

「え…?」

「晴海ちゃんの成長を見守れなかっただろう?…俺も、育ち盛りの陸の姿を見たかったから解るよ」

…月虹という閉塞された場所に縛られながらも、父はいつも笑っていた。

自分や陸を不安にさせないよう、己の気持ちは決して表に出さず、そうしていてくれていたのかな――

「…そろそろ時間切れ、だな。有難う風弓くん、話を聞かせてくれて」

「い、いえ。こちらこそ日頃お世話になってるお礼が言えましたから…」

「…陸が才臥さんや晴海ちゃんを助けたいと願う想いの強さが、お陰で良く解ったよ――待たせてごめんな、晴海ちゃん。陸はもうじき戻ってくるよ」

「…!」

少年のような笑顔を浮かべながら、周は晴海に向かって手を振った。

「過保護なところ見られると照れ臭いからな、愛梨に陸の足止めをして貰ってたんだ」

周が行ってしまったのを見届けると、晴海はこちらへ駆け寄り袖を引いてきた。

「……りっくんのおとうさん、やさしいね。それに…りっくんとそっくり」

「…ああ。案外あいつ、愛梨さんより周さん似かもな」


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