「…俺や陸にとっては有難かったが、才臥さんは……俺よりもずっとつらかっただろうな」
「え…?」
「晴海ちゃんの成長を見守れなかっただろう?…俺も、育ち盛りの陸の姿を見たかったから解るよ」
…月虹という閉塞された場所に縛られながらも、父はいつも笑っていた。
自分や陸を不安にさせないよう、己の気持ちは決して表に出さず、そうしていてくれていたのかな――
「…そろそろ時間切れ、だな。有難う風弓くん、話を聞かせてくれて」
「い、いえ。こちらこそ日頃お世話になってるお礼が言えましたから…」
「…陸が才臥さんや晴海ちゃんを助けたいと願う想いの強さが、お陰で良く解ったよ――待たせてごめんな、晴海ちゃん。陸はもうじき戻ってくるよ」
「…!」
少年のような笑顔を浮かべながら、周は晴海に向かって手を振った。
「過保護なところ見られると照れ臭いからな、愛梨に陸の足止めをして貰ってたんだ」
周が行ってしまったのを見届けると、晴海はこちらへ駆け寄り袖を引いてきた。
「……りっくんのおとうさん、やさしいね。それに…りっくんとそっくり」
「…ああ。案外あいつ、愛梨さんより周さん似かもな」
* * *
「え…?」
「晴海ちゃんの成長を見守れなかっただろう?…俺も、育ち盛りの陸の姿を見たかったから解るよ」
…月虹という閉塞された場所に縛られながらも、父はいつも笑っていた。
自分や陸を不安にさせないよう、己の気持ちは決して表に出さず、そうしていてくれていたのかな――
「…そろそろ時間切れ、だな。有難う風弓くん、話を聞かせてくれて」
「い、いえ。こちらこそ日頃お世話になってるお礼が言えましたから…」
「…陸が才臥さんや晴海ちゃんを助けたいと願う想いの強さが、お陰で良く解ったよ――待たせてごめんな、晴海ちゃん。陸はもうじき戻ってくるよ」
「…!」
少年のような笑顔を浮かべながら、周は晴海に向かって手を振った。
「過保護なところ見られると照れ臭いからな、愛梨に陸の足止めをして貰ってたんだ」
周が行ってしまったのを見届けると、晴海はこちらへ駆け寄り袖を引いてきた。
「……りっくんのおとうさん、やさしいね。それに…りっくんとそっくり」
「…ああ。案外あいつ、愛梨さんより周さん似かもな」
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