「…陸が月虹にいた頃の話を聞かせて欲しいんだ。陸は余り、俺にその話をしたくないみたいでな…」
そうか、周が何故自分に改まって話を切り出すのか不思議に思ったのだが――これを訊くためか。
「……ふゆちゃん、むずかしいおはなし?わたし…いないほうがいい?」
互いに渋い表情を付き合わせた風弓と周の表情を見比べながら、晴海が心配げに訊ねてきた。
「ん…いや、悪いけどこの部屋の中で適当に時間潰しててくれるか?」
「わかった…じゃああっちのまどから、おそとみてるね」
確かに話の内容自体は余り聞かせたくないのだが、傍を離れるのは晴海も自分も不安であった。
晴海は覚束ない足取りで窓辺へと駆け寄ると、庭に住み着いている猫の姿を見付けてそれをじっと眺め始めた。
「…君にとっても楽しい話題じゃないだろうに、すまない」
「いえ…俺には父がいましたし、施設内なら比較的自由に動けたので。陸に比べれば、全然…」
「大まかな話なら、京が保護した双子くんたちからも訊いてるんだが…陸は俺から月虹の話題を振るとやけに落ち着かなくなるから…気に掛かってな」
――そういえば先程、月虹について周から訊ねられたとき陸は少し狼狽していた。
「…架々見が、どのくらい月虹に干渉していたか君は知ってるか?もしも陸を担当していた才臥さんから、何か聞いているなら教えて欲しいんだが…」
「……わかり、ました」
一呼吸置いて小さく息を吸い込んだ瞬間、周は少々身構えるようにきつく手を握り締めた。
「月虹にいた頃の陸は髪が長かったんですけど…そうさせていたのは多分、架々見です。前髪も眼が隠れる程長くて、後ろ髪は…愛梨さんより少し短いくらいで」
「…、……」
周は何か言いたげに口を開きかけたが、結局何も言わずに息を飲み込んだ。
そうか、周が何故自分に改まって話を切り出すのか不思議に思ったのだが――これを訊くためか。
「……ふゆちゃん、むずかしいおはなし?わたし…いないほうがいい?」
互いに渋い表情を付き合わせた風弓と周の表情を見比べながら、晴海が心配げに訊ねてきた。
「ん…いや、悪いけどこの部屋の中で適当に時間潰しててくれるか?」
「わかった…じゃああっちのまどから、おそとみてるね」
確かに話の内容自体は余り聞かせたくないのだが、傍を離れるのは晴海も自分も不安であった。
晴海は覚束ない足取りで窓辺へと駆け寄ると、庭に住み着いている猫の姿を見付けてそれをじっと眺め始めた。
「…君にとっても楽しい話題じゃないだろうに、すまない」
「いえ…俺には父がいましたし、施設内なら比較的自由に動けたので。陸に比べれば、全然…」
「大まかな話なら、京が保護した双子くんたちからも訊いてるんだが…陸は俺から月虹の話題を振るとやけに落ち着かなくなるから…気に掛かってな」
――そういえば先程、月虹について周から訊ねられたとき陸は少し狼狽していた。
「…架々見が、どのくらい月虹に干渉していたか君は知ってるか?もしも陸を担当していた才臥さんから、何か聞いているなら教えて欲しいんだが…」
「……わかり、ました」
一呼吸置いて小さく息を吸い込んだ瞬間、周は少々身構えるようにきつく手を握り締めた。
「月虹にいた頃の陸は髪が長かったんですけど…そうさせていたのは多分、架々見です。前髪も眼が隠れる程長くて、後ろ髪は…愛梨さんより少し短いくらいで」
「…、……」
周は何か言いたげに口を開きかけたが、結局何も言わずに息を飲み込んだ。


