いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「えっと、あの…霊奈、さん…」

こちらが背筋を伸ばして固まってしまった様子を見兼ねてか、歩み寄ってきた周は苦笑して髪をわしわしと掻き混ぜてきた。

「う、わわ」

「周でいいよ、風弓くん。というより俺はそっちがいい」

何だかうちの母みたいに頭を撫でる人だな、なんて思いながら陸に良く似た緋色の眼を見上げる。

すると周は風弓の陰に隠れている晴海に対して、申し訳なさそうに目を細めた。

「…十年前に逢ったときは、此処まで俺に怯えなかった。真都と同じ髪色の俺や京が怖いんだろうな」

「!周さんと京さんを…?」

「君から引き離されそうになったことと、君に危害を加えられたことが余程怖かったんだろう。可哀想に、退行が起きた一因になったかも知れないな…」

だから京が陸を呼びに来たとき、急に晴海は抱き付いてきたのか。

愛梨と同様に柔和で丁寧な物腰の京だが、白金髪に加え蒼い眼という彩りは確かに真都にも共通する。

「…あいつが君たちにしたこと、本当に申し訳なかった」

「そんなっ…止して、ください!」

いくら親類の行いとはいえ、周や京は何も悪くない。

周が頭を下げる必要などないのに。

「…君に頼みがあるんだ。こんなこと持ち掛けるのは無神経だと、解ってはいるんだが……」

「…?俺に出来ることなら、何だって力になりますよ!俺たち姉弟が不自由なく春雷にいられるのは周さんのお陰なんですし」

すると周はゆっくりと顔を上げてこちらを見つめた。