いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「そうか…陸も愛梨さんも姉ちゃんが話すの、待っててくれてるもんな」

元々幼い子供の扱いが得意らしい愛梨の性質を、陸は受け継いだのだろう。

「…陸も、姉ちゃんのことが好きだよ。姉ちゃんのことを、とっても大切に思ってくれてる」

「ほんと…?」

「うん。今度出掛けなきゃいけない用事が出来たのも、姉ちゃんを守ってくれるために必要なことなんだ。だから…」

「……うん。わたし、さみしいけどちゃんとおるすばんするよ」

「…ん」

(だから早く陸のこと思い出してやって、仲直りしてくれよ。でないとあいつ、また無茶しそうで危なっかしいんだ)

――そのとき、入口の扉を叩く音が響いて風弓と晴海は同時に扉を振り向いた。

「…どうぞ」

陸が戻ってきたのだろうと思っていたが、開いた扉の向こうから現れたのは周だった。

「二人共、少しだけ時間を貰えるか?」

「…っ!」

周は遠慮がちにこちらへ微笑んで見せたが、やはり陸と愛梨以外の人間はまだ駄目らしい晴海は、素早く風弓の陰に隠れてしまった。

「姉ちゃん」

「ああ。気にしなくていいよ」

そう言ってまた笑う周の表情は、京や陸と良く似ている。

そのためつい忘れがちだが、彼は一国の領主だ――その周と陸抜きで初めて対面することに気付き、思わず肩に力が入る。