(理解し難くて、身動きが取りづらい…か)
悠梨の言葉に、ふと両親のことが頭を掠めた。
『父さんが私を守ろうとしてくれたんだってことも解る。でも…っ』
あのときの晴海も、きっと陸と同じ気持ちだったのだろう。
…守りたい者と守られる者の意向や利害は、必ずしも一致しない。
ましてやその両方の立場に板挟みとなったときに、間に立った者はどの選択肢を選んでも誰かを必ず悲しませることになる。
四年前――父は当初独りで月虹へ向かうつもりでいたし、母は最後まで家族が離ればなれになることに反対していた。
必死に説得して漸く、父は一緒に月虹へ行くことを承諾してくれたが、父や自分の決意に水を指す母の気持ちには当時――正直有難みよりも苛立ちを感じていた。
そのため母とは喧嘩別れのような形で月虹へ向かってしまったのだが、やはり残してきた母の胸中や何も知らない姉のことを考えると気持ちが沈んだ。
自分の“姉を守りたい”という意思を尊重する決意をしてくれた父は、それ以上に苦しかっただろう。
出来ることなら両親と姉と、何の不安もなく四人で幸せに暮らしていたかった。
――きっと父と母は、自分がそう思うより何倍ももっと強く、強くそう願っていたんだろうな…――
+ + +
悠梨の言葉に、ふと両親のことが頭を掠めた。
『父さんが私を守ろうとしてくれたんだってことも解る。でも…っ』
あのときの晴海も、きっと陸と同じ気持ちだったのだろう。
…守りたい者と守られる者の意向や利害は、必ずしも一致しない。
ましてやその両方の立場に板挟みとなったときに、間に立った者はどの選択肢を選んでも誰かを必ず悲しませることになる。
四年前――父は当初独りで月虹へ向かうつもりでいたし、母は最後まで家族が離ればなれになることに反対していた。
必死に説得して漸く、父は一緒に月虹へ行くことを承諾してくれたが、父や自分の決意に水を指す母の気持ちには当時――正直有難みよりも苛立ちを感じていた。
そのため母とは喧嘩別れのような形で月虹へ向かってしまったのだが、やはり残してきた母の胸中や何も知らない姉のことを考えると気持ちが沈んだ。
自分の“姉を守りたい”という意思を尊重する決意をしてくれた父は、それ以上に苦しかっただろう。
出来ることなら両親と姉と、何の不安もなく四人で幸せに暮らしていたかった。
――きっと父と母は、自分がそう思うより何倍ももっと強く、強くそう願っていたんだろうな…――
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