いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「いいから!お前は晴海ちゃんの傍にいてやれよ」

父の後を追おうと立ち上がった陸を、周は咎めるように語気を強めた。

「大人げない親馬鹿…」

「うっせーぞ悠梨」

悠梨からからかいの言葉を受けても周はいつになく素っ気ない態度で、足早に部屋から立ち去ってしまった。

突き放すように取り残された陸は、落ち込み気味に肩を落とした。

「俺…父さんの機嫌損ねちゃったのかな」

すると悠梨が、陸の頭をぽんぽんと優しく撫でながら「すぐ直るから気にすんな」と呟いた。

「あいつは結局、ただただお前が心配なんだよ。それと餓鬼の頃は相当な甘えん坊だったお前が、親離れするのが寂しいんだ。もっと自分を頼って欲しいんだろ」

陸が甘えん坊…意外だと一瞬思ったが、考えてみれば確かに霊奈家の面々は子煩悩そうだ。

「元々僕らに対してちょっと過保護なんだよね。陸は末っ子だし、月虹のことがあったから余計にさ」

「しかも、過保護の虫は確実にお前にも遺伝してるな」

京は笑顔を作ったまま、無言で悠梨の脇腹を小突いた。

「……それが嫌な訳じゃない、けど。俺だっていつまでも守られてばっかりじゃ駄目だし、何て言うか…どうしたらいいのか判んなくて少し…複雑だよ」

「仕方ないさ。親の愛情は若い頃には多少理解し難くて、身動きが取りづらいんだ。お前もおっさんになれば解るよ、現に奴も昔はかなり苦労した」

「へえ…悠梨さんにしては珍しく父さんの肩持つんだ?」

「お前らが可愛くて仕方ないって点に関しては、俺も大概似たり寄ったりだからな。まあ何処の親も似たようなもんだろ」

「…大事にされてるのは嬉しいんだけど、伯父さんは真顔で言うからちょっと怖いよ」