いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「…獅道と霊奈の対立は、そう簡単に歩み寄れる程根の浅い問題じゃない。それをお前は本当に理解してるのか?」

「っ……」

周は渋い顔付きのまま、少々きつめの視線を陸に投げ付ける。

陸は一瞬怯むように息を飲んだが、俯きがちに小さく首を振った。

「きちんと解ってないかも、知れない。確かに俺、まだまだ勉強不足だし世間知らずだ。けど、だからって最初から何もしないなんて、俺はそんなの嫌だよ」

「…陸……」

苛立ちを含んだ溜め息を落として、周は黙り込んでしまった。

ふと、場にそわそわとした不穏な気配が広がる。

「確かに陸の言うことは尤もだよ。ま、実際父さんは過去に一度断られてるから、気が引けるのも仕方ないけど」

すると京が、透かさず明るい口調で茶化すように声を上げた。

「けど昔とは状況が変わったってことで、もう一度当たってみてもいいんじゃない?別に不穏な話を持ち掛ける訳でもないし、しないよりはしたほうがいいと僕も思うよ」

「お前、さらっと簡単に言うけどなあ…」

長男から諭されるように笑い掛けられ、険しかった周の表情が幾分軟化する。

流石というべきか、京はこういった場面での立ち回りや気配りが巧い。

「で、どうする?領主によっては目下の人間からの申請は取り合わない場合もあるし、父さんがどうしても気乗りしないんなら名代で僕が申請するけど」

結局、陸の意向を汲む方向に話を流され周は少し居心地が悪そうに席を立った。

「…俺からするよ。やるなら早いほうがいいだろ」

「待って父さん、俺…」