確かに月虹の内情が分かれば、父の行方や残された能力者たちを救う糸口が見付かる可能性は広がる。
しかし陸も自分も月虹に身を置いていたとはいえ、潜入に役立ちそうな情報の持ち合わせは存外少ない。
「……父さん、あのさ」
「うん?」
「俺、冬霞の領主に逢ってみたいんだけど」
ふと息子から投げ掛けられた言葉に、想定外だったらしい周は思わず椅子から勢い良く立ち上がった。
「っ…何だって!?」
「香也の出自を知りたいんだ。本人は断言を避けたけど、あいつは獅道の関係者だ。多分、血族かそれに近しい立場の人間か…」
対する陸の落ち着き払った態度に、周もすぐ我に返って座り直した。
「…まあ、十中八九そうだろうな」
「なら獅道の当主である現領主も俺たちや晴の力について、何か知ってるかも知れない。獅道から情報を得られれば、香也が月虹とは別に何かしようとしてる意味も解る気がするんだ」
「でも陸、さっき周さんが言ってたじゃない。君が生まれたときも獅道に当たってみて駄目だったって」
「…だけど他に確実な情報を得られる手立てはないんだろ。霊奈の祖先を当たるにしたって…時間と労力が掛かり過ぎる、ぐずぐずしてたら架々見が今にまた何か仕掛けてくるよ」
祖先との対話が必要となれば周と京に頼るしかない――陸はまだ個人霊との交信が出来ず、その方法を修得するために割ける時間も少ない。
だが、元々周と京は本来の責務である春雷の国政を行う合間に月虹への対策や、他国への協力要請の準備に奔走している。
ただでさえ多忙な二人に、もうこれ以上負担を掛ける訳にはいかないと陸は考えているのだろう。
(さっき悠梨さんにも顔色悪いって言われてたし…陸、親父さんの体調心配してんだろうな)
「だから父さん、冬霞の領主と逢える機会を貰えないか俺から掛け合ってみたいんだ」
しかし陸も自分も月虹に身を置いていたとはいえ、潜入に役立ちそうな情報の持ち合わせは存外少ない。
「……父さん、あのさ」
「うん?」
「俺、冬霞の領主に逢ってみたいんだけど」
ふと息子から投げ掛けられた言葉に、想定外だったらしい周は思わず椅子から勢い良く立ち上がった。
「っ…何だって!?」
「香也の出自を知りたいんだ。本人は断言を避けたけど、あいつは獅道の関係者だ。多分、血族かそれに近しい立場の人間か…」
対する陸の落ち着き払った態度に、周もすぐ我に返って座り直した。
「…まあ、十中八九そうだろうな」
「なら獅道の当主である現領主も俺たちや晴の力について、何か知ってるかも知れない。獅道から情報を得られれば、香也が月虹とは別に何かしようとしてる意味も解る気がするんだ」
「でも陸、さっき周さんが言ってたじゃない。君が生まれたときも獅道に当たってみて駄目だったって」
「…だけど他に確実な情報を得られる手立てはないんだろ。霊奈の祖先を当たるにしたって…時間と労力が掛かり過ぎる、ぐずぐずしてたら架々見が今にまた何か仕掛けてくるよ」
祖先との対話が必要となれば周と京に頼るしかない――陸はまだ個人霊との交信が出来ず、その方法を修得するために割ける時間も少ない。
だが、元々周と京は本来の責務である春雷の国政を行う合間に月虹への対策や、他国への協力要請の準備に奔走している。
ただでさえ多忙な二人に、もうこれ以上負担を掛ける訳にはいかないと陸は考えているのだろう。
(さっき悠梨さんにも顔色悪いって言われてたし…陸、親父さんの体調心配してんだろうな)
「だから父さん、冬霞の領主と逢える機会を貰えないか俺から掛け合ってみたいんだ」


