いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「二人共、誰か心当たりはいないのか?」

――そう悠梨に訊ねられた瞬間、陸は不意に表情を強張らせた。

「…陸?」

「いや…俺には、全然」

陸はそのまま浮かない顔付きで俯いてしまった。

だが陸の状況を思い返せば、自分よりも遥かに月虹の内情を知る手段は少なかっただろう。

「だよな…俺も全く見当つかないしな…月虹の研究員は殆ど如月が集めてきたらしいけど、親父だけその中で畑違いだったからなあ」

「…如月が充さんを匿ってるって可能性は?実際あいつは充さんの実力を高く評価してただろ」

「そりゃ、奴は親父の腕をかなり信用してたらしいが…それ以上に架々見に忠実な筈だぜ?それこそ故郷の黎明を裏切って、架々見に従ってるくらいだぞ」

「…でも他に充さんを助けられるような立場の人間って」

「…いないんだよなあ。副所長の三満は親父に対抗心燃やしまくりだったし、他の平研究員たちは自分の仕事を淡々とこなすだけのつまんねえ奴らだったし」

「…そう、だよな。だったら充さんは今、何処でどうしてるんだ…?」

陸の言う通りだ、折角周や京が調べてくれたお陰で父の生存率が一気に跳ね上がったというのに。

当の本人は、一体何処にいる――?

「…誰が才臥さんを助けたにせよ、もし自由の身なら家族や友人に連絡くらい寄越しそうなもんだろ?なのに全く何の音沙汰もないってのは…」

「充さんはまだ、月虹にいる…若しくは行動を制限されたや状況下にある。その可能性が高いってこと?」

周の言葉を受けて、陸は少し悩むようにかくんと首を傾けた。

「…もう一度、月虹の施設内部を探る機会があればいいんだけどな。向こうもそう簡単に何度も侵入させてくれないだろうけど」