いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「施設の連中から虚偽の報告でもされてるんじゃないのか?あいつ人望ねえし」

周が吐き捨てるようにぞんざいな口調で言い放った。

先程、獅道の話をしていたときでさえこんなにも明らかな嫌悪感は顕にしていなかったのに。

「…元々人の上に立てる器の人間じゃないからな、あの碌でなしは」

それに続いて悠梨が毒づく。

彼の物言いは元より辛辣だが、珍しくその表情にはほんの僅かだが苛立ちが浮かんでいるように見えた。

まあ、あんな変態に自分の大切な妹が付け狙われていたら、苛立つのも当然だろうが。

「そもそも、どうしてあんな奴が領主になれたんですか?あいつは確かに先代領主の息子ですけど、薄暮の領主は世襲じゃないですよね…?」

先代領主はあの架々見の父親とは思えない程、立派な人物だったと聞いたことがある。

「ああ、確かに薄暮の領主は前任者の指名制だが…先代は後継者を決定する直前に亡くなってる」

「え…それじゃあ…」

「だが奴は、自分を後継者にするよう先代が遺言を残していると主張し始めたんだ。異論を申し立てる人間は、領主子息としての権限を利用して始末した」

「…!!」

「そうして架々見は領主の地位を得たんだよ。周りの人間は殺されたくないから、奴の顔色を伺って媚び売ってるってことだな」

成程、元より性根の腐った人間だとは思っていたがこれ程までとは。

「じゃあ奴を欺いて、充さんを助けてくれた人間が月虹にいるかも知れないのか…でも、なら充さんは…?」

「まだ月虹内部にいるのか、それとも別の場所にいるのか。せめて協力者が連中の誰だか判ればなあ…」

能力者であれば何とかその気配を探ることも可能だが、生憎父は非能力者だ。