「父さん、さっき風弓に何か言い掛けてなかった?」
「ああ…そうだな、悪い。才臥さんのことだったんだが」
「親父の…?」
思いがけず上(のぼ)った父の話題に、嫌が応にも胸がざわつく。
それが周の口から発せられるとなると、まさか――
「やっぱり、彼はまだ亡くなっていないと思うよ」
「…!!」
思わず、両足の痛みも忘れて立ち上がりかけてしまった。
「俺も京のときと同じでな、霊界――所謂あの世で彼らしい人物は見当たらなかったんだ。ただ…」
「ただ?」
「何らかの未練を残して亡くなった人間の魂(こころ)は、現世に留まり続けることもある。その場合いくら霊界に干渉したところで、見付かりやしない」
現世への、未練――もし父が心残りにしているとしたら。
「もし…そうだとしたら、父は姉を一番に心配すると思います」
「そうだろうなあ…だが、彼女の傍にそれらしい気配は今まで一切現れてない。勿論、他の場所にも現れれば分かる筈だがそれもないんだ」
「となると、やっぱり充さんに関する架々見の発言も嘘ってことになるのかな」
そうだ――あのとき架々見は自分たち姉弟の目の前で、父の死に際について得意気に語ろうとしていた。
あれも演技だったのだろうか。
「ああ…そうだな、悪い。才臥さんのことだったんだが」
「親父の…?」
思いがけず上(のぼ)った父の話題に、嫌が応にも胸がざわつく。
それが周の口から発せられるとなると、まさか――
「やっぱり、彼はまだ亡くなっていないと思うよ」
「…!!」
思わず、両足の痛みも忘れて立ち上がりかけてしまった。
「俺も京のときと同じでな、霊界――所謂あの世で彼らしい人物は見当たらなかったんだ。ただ…」
「ただ?」
「何らかの未練を残して亡くなった人間の魂(こころ)は、現世に留まり続けることもある。その場合いくら霊界に干渉したところで、見付かりやしない」
現世への、未練――もし父が心残りにしているとしたら。
「もし…そうだとしたら、父は姉を一番に心配すると思います」
「そうだろうなあ…だが、彼女の傍にそれらしい気配は今まで一切現れてない。勿論、他の場所にも現れれば分かる筈だがそれもないんだ」
「となると、やっぱり充さんに関する架々見の発言も嘘ってことになるのかな」
そうだ――あのとき架々見は自分たち姉弟の目の前で、父の死に際について得意気に語ろうとしていた。
あれも演技だったのだろうか。


