慌てて晴海の元へ戻ろうとすると、自分よりも先に立ち上がった愛梨に引き留められた。

「大丈夫よ、任せて」

「え…」

「母さん?」

愛梨は優しく微笑むと、狼狽する自分や陸を横目に晴海の元へと歩み寄った。

当の晴海は、寝台の上で怯えるように蹲(うずくま)っている。

「晴海ちゃん」

だが鈴が鳴るような柔らかい声に名を呼ばれ、晴海は恐る恐る愛梨に視線を向けた。

「……、だれ…?」

「私は、愛梨よ。ごめんなさいね、風弓くんはあっちでみんなと大事なお話の最中なの」

「…あいり、さん」

愛梨の姿をしげしげと見つめて、晴海は不思議そうに首を傾けた。

「……さっきのひととそっくり。かみのいろも、おんなじ…」

「あら?陸のことかしら」

愛梨の問いに、晴海は小さく頷いた。

「だって、私は陸のお母さんだもの」

「…おかあさん?」

どうやら晴海は愛梨に興味を持ったらしく、少し警戒の色を緩めた。