「――とうさん」

すると陸の口から、そんな言葉がふと発せられた。

「えっ」

思いがけない一言に、今度は男性が不思議そうに瞬きをする。

「……ゆめで、だれかがいったんだ」

「何て?」

「とうさん、おにいちゃん、たすけて……だって」

「……!」

男性が俄に顔を顰(しか)めたのを他所に、陸は怪訝そうに首を傾げた。

「とうさん、は…おそわったからわかる。でも、おにいちゃんって、なに?」

陸の言葉に男性は少し躊躇うように考え込んでいたが、ふと胸元から何かを取り出した。

「――これを見てごらん」

「…?」

男性が差し出したのは、一枚の写真だった。

其処には男性と同じ年齢くらいの女性が、陸よりも少し幼い子供を抱き抱えている姿が写っている。

「……ふゆ、み?」

陸はその子に、見知った少年の面影を見出だしてそう呟いた。

「似てるだろう?でも風弓じゃない。この子はね、風弓の双子のお姉ちゃんなんだ」