大袈裟な程に憐れんでくれたのはいいとして、そんなことは決してない。

人の記憶喪失に乗じて事実の捏造を図るのは勘弁して欲しい。

「陸様、是非わたくしの国にもいらしてくださいませ。春雷も素晴らしい国ですけれども、我が国もきっとお気に召して頂けると思いますの」

「ええ。まあもし機会があれば、いずれ」

…というか、この娘はどの国出身だっただろうか。

目の前の令嬢たちには大変申し訳ないのだが、陸は少しでも早くこの見合いを終わらせることしか頭になかった。

早く晴海を迎えに行きたい。

逢って、すぐに迎えに行けなかったこの状況のことを説明――いや、謝りたい。

正直、香也が晴海に接触してからずっと、晴海を奪われるのではないかと不安で苛立っていた。

香也がいつ晴海のことを知ったのかは解らない。

だが充は香也の担当も兼任していた筈だから、香也も自分と同じく何かの機会に幼い晴海の写真を見たことがあるのかも知れない。

香也が彼女を執拗に付け狙うのは、単なる自分への宛て付けなのだろうか。

いや――何にせよ、あんな馬鹿なことをして晴海を泣かせてしまったのは子供染みた自分の言動のせいだ。

いつも晴海を悲しませるようなことばかりしてしまって、自分は一体、何をやっているんだ――

「陸様?どうされましたの?」

しまった――すっかり上の空になっていたらしく、令嬢たちが訝しげな表情でこちらを注視していた。

これ以上彼女らを無下に扱っては流石に親元から苦情が飛んで来そうだ、表面上だけでも愛想良くしなければ。

「…え、ああ。なんでも……、…っ!?」