「ぐうっ…!!」

「姉ちゃん!」

晴海は真都が怯んだ隙にその腕を振り払うと、風弓の元へ駆け寄った。

そして不安定な風弓の身体を支えるように、その腕に抱き付いた。

「ふゆちゃんっ…!」

風弓はこちらに向けて安堵の表情を浮かべると、真都を真っ直ぐに睨み付ける。

しかし次の瞬間すぐ傍で鈍い打撃音が響いたかと思うと、風弓の身体ががくんと先程よりも大きく揺らめいた。

「っ…!!」

「ふゆちゃんっ?!」

そのまま床に昏倒した風弓の背後には、見知らぬ大柄の男が立っていた。

この男が、風弓に何をしたのか。

「僕が部下も連れずに一人で出歩くと思ったのかい?大人しく退かないから悪いんだよ」

ずぶ濡れになった真都が、笑いながら背後に近付く。

何か言っている、気がする。

そんなことよりも風弓が、動かない。

「ふゆちゃんっ…ふゆちゃん!!」

何度呼び掛けても、揺り動かしても、目を開けてくれない。

「さ、こんな粗野な弟くんのことは放っておいて、僕と一緒においで」