暖かな昼下がりの陽射しが窓辺から降り注ぐ中、夕夏の面持ちは浮かないままだった。

夕夏はこの数日間、眠り続ける賢夜の傍から殆ど離れずじっとしている。

傷だらけだった賢夜の身体は、治癒魔法を受けてすっかり綺麗になった。

生命維持のために取り付けられていた沢山の機械類や点滴の管を外しても、穏やかに眠り続けられる程に回復した。

なのに、依然として賢夜は目を覚まさない。

「けん、や」

平時の彼女からは凡(およ)そ掛け離れた、弱々しい声が夕夏の口からふと零れた。

虚ろな金の双眸で賢夜の寝顔を一頻り眺めると、夕夏は緩慢な動作で弟の目元を撫でた。

「はやく、起きなよ…あんたはいつも、そうやって……寝てばっかりいて…」

其処で言葉を切ると、夕夏はかくんと項垂れて賢夜の傍らに突っ伏した。

「っ……」

慶夜がいなくなったときは、賢夜と暁が傍にいてくれたから何とか耐えられた。

だけど今度は、誰もいない――

独りでは苦しくてつらくて、堪らない。

「賢、暁………私、どうすればいい…?」

そして――賢夜をこんな目に遭わせたのは、慶夜だという事実が何よりも耐え難かった。

「慶……あれが本当に、あの優しかった慶夜…?」

それこそ、姿かたちを似せた別人かのようだった。