「――あき、ら」

「夕。帰って来たら、僕は………」

「暁」

躊躇いがちに口籠る青年の上着を握り締めると、少女はその胸元に額を擦り寄せた。

「…それ、帰ったら聞く。賢と慶にもちゃんと話したいから。だから…今はまだ私の父さんでいて」

「うん…」

少女はゆっくりと青年から身を離すと、彼の翠緑色の眼を見つめて微笑んだ。

「行ってくるね、父さん」





憂(うれい) 終.