「風弓…」

慌てて身を起こすと、晴海の傍に他には誰もいないことを確認する。

「一人で此処まで来たのか…?独りで行動するなって言ったのにっ…」

思わず咎めるような口調になってしまったと自分でも思ったが、晴海はやはり酷く気落ちした様子で俯いた。

「…ごめん」

「い、いや…無事だったからいいんだけどな?今更一人で帰らせる訳にもいかないし…泊まる気で来てくれたんだろ?」

慌てて言葉を繋ぐと、晴海は浮かない顔付きのままこくんと頷いた。

「俺もさ、ちょうど退屈してたんだ。だから良かったよ」

「ほんと…?私、邪魔じゃない?」

「うん」

大袈裟な程に首を縦に振って見せると、晴海は弱々しく微笑んだ。

「…良かった」

晴海の様子がおかしいことは一目瞭然だった。

昨日も色々と悩んでいたし、もしや陸と何かあったのだろうか。

でもきっと今はあれこれ詮索されたくないだろうから、何も訊かないでおこう。

「…ところで姉ちゃん。飯、食べたのか?」

時刻は夕食時を少し過ぎた辺りだ。

微妙な時間帯なだけに、食べそびれている可能性は高い。