――頭上から面会時間の終了を知らせる放送が流れてくる。

橙から紫、紫紺へと黄昏れる空模様を眺めながら風弓は小さく溜め息をついた。

今日はもう誰も来ないな。

ああ、けど夕夏がもしかしたら様子を見に来てくれるかも知れない。

昨日も夕食の時間に来てくれた。

元より訪問してくる人物に限りがあるので、余りすることがない入院生活の中で話し相手になって貰えるのは素直に嬉しい。

夕夏自身、たまには話し相手が欲しいのだろうな。

「あー……暇だ」

担当医の日程調整がつき次第、両足の歩行訓練は始まるらしいが。

それまでは一日中寝るか、本を読むか、それくらいしかすることがない。

ごろんと横になってみたものの、まだ眠る気にもなれない。

――すると、不意に誰かが出入口の引戸を叩く音がした。

恐らく夕夏か、巡回の看護師だろう。

「はいはい」

そう思い何の気なしに返答する。

だが、滑るように開かれた扉の向こうに立っていたのは、予想に反して自身の双子の片割れであった。

「ねっ、姉ちゃん…?!」

晴海は浮かない表情で、縋るような眼差しをこちらへ向けていた。