「りく……お見合い、するって…ほんと…っ」

独り言のように掠れた声で訊ねると、陸はどきりとしたように顔を顰めた。

「何で、晴が知って…」

陸の言葉を聞いた瞬間、胸の中の痛みとざわつきが急激に増す。

「するん、だ…やっぱりっ……私なんかじゃ駄目、なんだ…」

「!そうじゃない、俺はっ…」

頭の中がぐちゃぐちゃになって、耐え兼ねた晴海は部屋を飛び出した。

「はるっ…」

「こないでっ!!」

「晴!!」

陸の声が背に突き刺さったが、構わず廊下を抜けて階段を駆け降りる。

後を追ってくる足音は聞こえなかった。

勢いに任せて邸を出て、晴海は夕闇が迫る街道へと走り出した。





逢魔が時に逢瀬(おうせ) 終.