いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「それにしても、外見が物珍しいとそれだけで持て囃されるから楽なものだね」

真都は向こうで来客と談笑する愛梨と陸へと交互に視線を巡らせると、嫌味たっぷりの口調でそう言い放った。

「元は何の力もない平民とその子供の癖に。自分たちが周叔父様や京兄様のように偉くなったと勘違いしているんじゃないか?」

無論、己の母譲りの髪色や容貌が人の目を引きやすいのは自覚している。

しかし自分はともかく、母がこういった席で毎回大勢の人々に囲まれてしまうのは見た目より人当たりの良い性格故にだろうと思う。

「…お前って、毎回似たような話ばっかり言っててよく飽きないよな」

幼い頃は馬鹿正直に真都の嫌味に逐一反応していたが、今や十数年もの間進歩のない相手には、逆に憐れみを覚える。

「ふん…所詮お前にはそうやって気にしてない振りを装うことしか出来ないんだろうな」

記憶のない頃に再会していたら多少は腹が立ったかも知れないが。

「――ところで晴海…とかいったかな、お前が大事にしてるらしい女の子の名前は」

「…彼女に近付くなよ。それに、彼女はお前の大好きな身分階級の世界なんかとは無縁だぞ」

ふと陸の目付きと声色が一変したのを見て、真都は満足げに笑った。

「僕なんかより、彼女にはお前の他に気になる男がいるみたいだけどな」

「…は?」

自分のことをいくら言われても、最早苛立ちはしないが――晴海のことまで話が及ぶとなれば別だ。

「何を根拠に、そんなこと…俺のことならまだしも、口から出任せ言って彼女を侮辱するな」

鋭い眼差しで睨み付けると、真都は憐れむような眼でこちらを見返した。

「信じたくない気持ちは解るよ、でも僕はこの眼で見たんだ。病院の中庭で長髪の男と彼女が逢ってるところをね」