いとしいこどもたちに祝福を【後編】

金砂は特に同じ大陸にある炎夏との交友の深い国だが、炎夏とは違い薄暮の支配下には置かれていない。

月虹との対立が激化した折、他国から協力が得られるとなれば非常に有難い話だ。

「父は国同士での衝突が起きることを避けたいと願っていますが…もしものときには是非ご協力頂ければ」

陸も相手の掌を握り返して、小さく頷く。

「国と国との対立となれば、最も被害を被るのは国に住む民たち。霊奈様はそれを憂いているのでしょうな」

「ええ…」

だからこそ、月虹との因縁は自分自身の手で着けたいと思っているのだが。

晴海を悲しませずにそれを果たすには、どうすれば良いのだろう。

「さて、私はそろそろお暇しなくては。慌ただしくて申し訳ない」

「こちらこそ本日はお忙しい中、急なお呼び立てにも関わらずお越し頂いて本当に有難うございました」

「最後に今一度ご両親にもご挨拶させて頂きますね。それでは陸様、またの機会に」

優しく微笑む相手に笑顔を返して、軽く手を振る。

訪れる客が全員、彼のような落ち着いた物腰で話が出来る人間なら接待も幾分楽なのだが――

「やあ陸、馴れない上流社会の空気に随分とお疲れのようだね」

出た、言ってる傍から面倒なのが。

「真都…まだ春雷にいたのか」

「僕がいつまで滞在しようがお前には関係ないだろう?この国はお前のものでもあるまいし」

いや、常日頃から自分の国が一番だと言っているのだから、そんなに秋雨が恋しいなら早く帰ればいいのに。