いとしいこどもたちに祝福を【後編】

友好国の領主一族をはじめ、各地から有権者や貴族などの高い身分や地位を持った上流階級の人間が数多く邸を訪れる。

昨日に引き続いて彼らの対応に追われている陸は、愛想笑いを浮かべながら胸中で小さく溜め息をついた。

子供の頃はあまりこう改まった場に居合わせることは少なかったので、公的な会合に赴く機会が多い周や京の苦労を思い知る。

そもそも昔から周は、あまり愛梨と陸を人が多く集まる場所に連れ出すことを好まない。

「お前たちは俺や京だけで独占したいんだよ」だなんて周はふざけて見せるが、実情は架々見のような良からぬ考えの持ち主から自分たちを遠ざけるためだろう。

しかし今回はそうも言っていられない。

「お久し振りです、陸様。すっかりご立派になられましたな」

そう声を掛けてきたのは金砂の領主を務める、優しげな初老の男性だ。

彼とは自分がまだ幼い頃に一度、何かの祝賀会に招かれた席で対面したことがある。

「有難うございます、ご無沙汰してしまってすみません」

「こうして無事に戻られただけで何よりですよ。四年前のお父上の落胆ぶりは掛ける言葉も見付からない程でしたからね…」

「本当に…家族や皆様にはご心配をお掛けしました」

「いや、しかし…あまり大きな声では言えませぬが、現状もなかなか大変な事態とお聞き受けしております」

「!それは…」

金砂の領主は、こそりと声を潜めて言葉を続けた。

「件(くだん)の施設から我が国の住民二人を保護してくださった、とお父上から連絡を頂いた際に。必要とあれば我が国も微力ながらお力添え致します故、いつでもお声掛けください」

金砂の領主は穏やかな笑みを浮かべながら、力強く陸の両手を握り締めた。

「そう言って頂けると心強いです、本当に有難うございます」