いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「はいはい?」

「昨日、病院で京さんの従兄弟だって方に逢ったんです。秋雨の、領主様の…」

咲良はそれまでにこにこと優しく微笑んでいたが、真都の名を耳にした瞬間に表情が渋くなった。

「…真都様に?まあ晴海ちゃん、あの方に何か変なことされなかった?」

京といい咲良といい真っ先に出てくる言葉がほぼ同じとは、真都の評判の良さが見て取れる。

「大丈夫です、弟もいましたし。ただ彼が、陸のことを妙に嫌ってるみたいだったから、それが気になって…」

真都の言う通り、陸と彼に血の繋がりはないが――あの嫌悪ぶりは少し異様に思えた。

「真都様だけじゃないのよ、あの家は誰でもそうなの」

「え…」

「真都様の生まれた占部家は、昔から身分階級に強い拘りを持つ家なのよ。例外は、京様のお母様である都様くらいね」

確かに、京の母親だという人が真都のような考えを持つとは思い難い。

「血縁者の都様と京様を持て囃すだけならまだしも、何かにつけて愛梨様や陸様と比べて貶すから嫌なのよ、あの家は。流石に旦那様の前では露骨な批判はなさらないけど…あれじゃあ愛梨様や陸様は勿論、京様がお可哀想だわ」

比較しなきゃろくにものを話せないのかしら、と咲良は憤慨した。

占部家に対する嫌悪感は相当なもののようだ。

「それでも先代の占部家当主よりかは随分ましなのよ。先代は領主としては年若い旦那様や、病弱な都様すら疎んじていたもの」

「実の娘ですら…?」

「ええ。その点、今の当主様は都様には優しい御兄様だったみたいだから…旦那様の後妻なら、多分誰でも気に入らなかったんじゃないかしら」

でなければ愛梨が不必要に人から嫌われる筈がない、と咲良は息巻いた。