いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「好きだ、晴」

「…!」

「やっと、こうして面と向かって言えた」

陸は苦笑しながら繋いだ掌を少し強く握る。

「……本当はあの時計塔で言ったみたいな形じゃなく、もっときちんと伝えたかったんだ。俺の気持ちや、充さんと風弓のこと」

そうだ――春雷が襲撃を受けた日、話があると陸は事前に言っていた。

「炎夏で、傍にいて欲しいって言ってくれた時点で、すぐにでも話したかった。だけど自分の素性が知れない上に、充さんを見捨ててきた俺には…何も言えなかった」

ずっと頑なだった陸が、漸く心を開いてくれたときのことだ。

あの頃から陸はよく笑うようになってくれて、とても嬉しかった。

「でもみんなが俺の家族を探してくれることになったから…だから、家族が見付かったらそのときに全部話そうって決めてたんだ」

「陸…」

「なのに結局、あんな状況で打ち明けてしまったら…晴のことを困らせるって解ってた。でも、俺は香也の話を聞いた晴に軽蔑されたと思ったから…せめて俺の気持ちを知って欲しかった」

軽蔑――そういえば陸は、仄の前でもそんな言葉を口にしていた。

充や風弓を差し置いて月虹から脱出したことを、自分や仄に責められると思っていたのだろうか。

「そんなことない。私は…確かにあのときは動揺してて、誰の話を信じればいいか解らなかったけど…陸がいつも父さんのこと、沢山話してくれてたことを思い出したから」

「…充さんが初めて家族の話をしてくれたとき、言ってたんだよ。奥さんと娘を月虹に関わらせたくないから、二人には行き先を告げないで家を出たんだって」

「じゃあ、母さんも二人の居場所は知らなかったんだ…」

「仄さんは、薄々何か感付いてたのかも知れない。それでもずっと、俺のことを信頼してくれた」