「りく?」

やはり疲れているんだろう。

それとも何か嫌なことでもあったのだろうか。

今日陸が顔を合わせた人物の中には、真都のように陸に好意的でない者もいたのかも知れない。

それに、あのあと邸に向かった真都とも顔を合わせている筈だろう。

「この後に入ってる予定って、すぐに行かなきゃならないの?陸も居ないと駄目?」

「駄目だよ、俺でなきゃ」

陸はそのままの体勢で小さく呟くと、一層腕に力を込めた。

「そっか…疲れてるのに、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

そして不意に顔を上げてから、晴海の手を引いて歩き出した。

「行こう、晴」

「えっ?で、でも…」

戸惑いを隠せずにいると、陸はくるりと振り向いて嬉しそうに微笑んだ。

「今から入ってるのは、晴と一緒にいるって予定だから」

「!」

そうして陸は手を繋いだまま、邸には入らず庭園の方へと足を向けた。

辺りは陽が沈みかけていたが、所々に外灯が設置された庭はぼんやりと薄明るい。