いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「君が生まれる三年も前のことだよ。君の気にするようなことじゃない」

「そうもいかないよ、僕の名前は叔母様から一字頂いてるしね。父様にもきちんと赴くよう言われたんだ。陸やあいつの母親への挨拶なんかよりよっぽど大切だよ」

「…!」

陸や愛梨をこんな卑下するような言い方するなんて。

「真都、陸は僕の弟だよ」

京は顔を顰めて真都を諌めたが、当の本人は悪びれもせず更に口を開いた。

「そんなの僕には関係ないよ、僕とは血の繋がりだって一切ないんだ。平民の女から生まれた奴なんか、従兄弟とも認めたくない」

「…真都」

京の握り締めた拳がびくりと震えたのを見て、晴海は京が込み上げる怒りを押し殺していることに気が付いた。

「…まあ、周叔父様には久々にお逢いするし、ご挨拶したいからね。邸にはちゃんと先に向かってるよ、兄様」

すると、真都は京の怒気に気付いてか否か不意に踵を返して足早に去っていった。

警備員たちは心配そうに京を振り向きつつも、真都の後に続く。

京は暫く押し黙って俯いていたが、不意に顔を上げて笑顔を作った。

「ごめん、二人共…」

晴海は咄嗟に、固く握られたままの京の拳を掴んだ。

京の笑顔が、いつもよりぎこちなく見えたから。

現にその手は、まだ震えている。

「……っ…」