いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「おい、てめぇ姉ちゃんに近寄んな!!」

領主子息と知っても尚、真都への言葉遣いを一切改めない風弓に、周囲の警備員たちは狼狽しつつも静観していた。

「美しいお嬢さん…どうかな、これから僕と食事にでも行かないかい?」

「…お断りします」

そう即答した瞬間、真都は再び大袈裟な仕草で頭を抱えて見せた。

「なっ…?!信じられない、まさかこの僕からの誘いを断る女の子がいるだなんて…!」

…何処かで誰かが似たようなことを言っていたような。

「ではお嬢さん、せめてお名前を教えて頂けないか?」

しかし真都はさっさと立ち直ったかと思うと、半ば無理矢理その手に両手を掴まれた。

「えっと、あの…」

「――晴海ちゃん!」

其処へ不意に割って入った声に、晴海と真都は同時に顔を上げた。

「京さん」

「兄様!」

(……にいさま?)

自分の知る限り、京には陸以外に弟はいない筈だが。

「何だ、君は京兄様の知り合いだったのか」

駆け寄ってきた京と晴海を見合わせて、真都は苦笑しながら頭を掻いた。